小泉進次郎農林水産大臣は、5月21日の就任以来、スピーディー、かつ精力的に当面の最重要課題である「コメの価格を落ち着かせ需給を安定させる対策」に取り組んでいる。また、中長期を見据えての農政改革にも意欲的な発言・行動が強く感じられる。
ここには、かねてより、石破茂首相が行おうとしていた農政改革を改めて実現したいという意味合いが強いものと思う。両者の方向は、共通し、終始一貫している。
小泉農水大臣の就任1カ月を振り返り、トレースをしてみたい。
政府備蓄米の放出
コメ価格、とくに消費段階での価格を早急に落ち着かせるために、政府備蓄米放出の路線を変更し、①価格が高くなる入札方式から随意契約(定価販売・輸送費用政府持ち)に、②集荷事業者が95%を占めた放出先から、スピーディーに消費者段階に到達できる小売事業者を対象へと追加し、③価格の落着き効果が出るまで無制限に放出、さらには、④ミニマムアクセス(MA)米のうちのSBS(売買同時契約)と呼ばれる輸入主食用米の調達時期を前倒しするなど次々に手を打っている。
市場にインパクトを与える放出とは「十分な量」ではなく「十二分な量」でなければ効果がないというのは常識であるのだから対応方向としては優れている。また、政策のバックグラウンドを形成する「中長期のコメ生産の基本路線」を「減反から増産」へ切り替えるとの発言も、「水田面積の確保による食料安全保障」と「農村地域の維持・発展」につながるもので、好感を持って迎えられているといえよう。
備蓄米の放出の遅れ、入札売却(=高値放出)、小刻みな放出、消費から遠い集荷業者への放出といったこれまでの放出は、戦術的にも劣るやり方であった。